疲れやすい、生きにくいと感じたことはないでしょうか。
世の中には一定の割合でこのように感じる方がいます。
例えばこういった悩みはありませんか?
- 人の顔色を伺いすぎる
- 人から言われたことをずっとひきづる
- 考えすぎて行動できない
- 我慢できない音、匂い、光がある
もし該当するものがあれば、あなたはHSPかもしれません。
私もHSPなのですが、日常生活はもちろん仕事や学校生活でも悩むことは多いですよね。
この記事ではHSPとは何か、どのように向き合っていけばいいかを紹介します。
HSPとは?
HSP(エイチエスピー)は「Highly Sensitive Person」の略で、「敏感すぎる人」、「繊細すぎる人」という意味です。
1996年にアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念で、まだまだ新しい考え方であるためあまりよく知られていません。
ただ、人口の20%(5人に1人)がHSPだとも言われており、自覚がないだけで実はHSPだという人が多いのが事実です。
また、HSPは人間だけでなく他の霊長類や犬や猫、鳥や虫にまでHSPは存在します。
周囲の刺激や変化をいち早く察知し、「これから何が起こるか」を瞬時に予測、判断し仲間に伝えることで群れの危険を回避する重要な役割でした。
つまり、HSPは生き物の生存戦略の一環だったのです。
HSPの特徴
アーロン博士はHSPには4つの大きな特徴があるといいます。
この4つに当てはまればHSPであり、どれか1つでも当てはまらないものがあればHSPではなく「ただ感覚が鋭いひと」であるそうです。
その大きな特徴はそれぞれの頭文字をとって「DOES」と呼ばれます。
D(Depth of processing): 情報処理能力が高い |
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---|---|
O(Overstimulated) 過剰に刺激を受ける |
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E(Emotional intensity) 感性豊かで共感性が高い |
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S(Sensory sensitivity) 感覚が鋭い |
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右側の項目は例であり、すべての項目に当てはまる必要はありません。
例えば、「O(Overstimulated):過剰に刺激を受ける」の項目のなかでも当てはまるものと当てはまらないものがあったとします。
どうしても我慢できない音や匂いがある | 当てはまる |
---|---|
痛みや空腹、人混みが苦手 | 当てはまらない |
他人の些細な言葉や言動に傷つき、何日も考え込む | 当てはまる |
でも、全体として「私は過剰に刺激を受ける方だ」と思ったらそれは「Oに当てはまる」といえます。
このようにDOESすべてに当てはまればHSPの可能性が高いのです。
HSP診断
もし「自分はHSPでは?」と思った方は以下のチェックリストを確認して、どれだけ当てはまるかチェックしてみてください。
何個当てはまるものがありますか?
- 苦手な音、匂い、感触があり気分が悪くなったり動けなくなったりする
- 周囲の環境の微妙な変化によく気づく
- 他人の気分に左右され自分の気分が変わる
- 痛みにとても敏感
- ベッドや暗い部屋などプライバシーが守られる空間にひきこもりたくなることがある
- カフェインに敏感(眠れなくなる、気分が悪くなる等)
- 明るい光、強い匂い、サイレンの音などに圧倒される
- 空想が好きだ
- 騒音が苦手
- 美術や音楽で深く感動する
- 時々神経が擦り切れたように感じ、一人になりたくなる
- 良い人とよく言われる
- 些細なことで驚く
- やらなくてはいけないことが重なるとどうしていいかわからなくなる(もしくは不機嫌になる)
- 他人がどうすれば快適になるかすぐに気づく
- 一度にたくさんの物事を頼まれるのがイヤだ
- ミスや物を忘れがないように何回もチェックする
- 暴力シーンが多い映画やテレビ番組が苦手
- 自分の周りで様々な起こると不快もしくは不安になる
- 空腹で気分が悪くなることが多い
- 生活に変化があると混乱する
- 繊細な香りや味、音、音楽などを好む
- 同時に自分の中でたくさんのことが進行すると気分が悪くなる
- 予測できない自体を避けることを普段から優先している
- 大きな音や整理されていない空間、状況に悩まされる。
- 仕事をする時誰かに見られていると緊張していつもの実力を発揮できない
- 幼い頃から「内気」、「内向的」と言われてきた
参考:ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 (SB文庫)
エレイン・N・アーロン [著]・冨田香里 [訳] 講談社 / ソフトバンク文庫
これらの質問のうち14個以上に該当した場合HSPの気質があると言え、当てはまるものが多いほどHPSの度合いも高いです。
ただし、仮に当てはまったものが13個以下だったとしても、そのうちどれか1つが強烈に当てはまる場合などはHSPである可能性があります。
大事なのはDOESの4つの特徴を持っているかどうかです。
13個以下でもDOESに当てはまっている場合は、HSPの知識は持っておくとよいかもしれません。
HSPは病気?
HSPは病気ではありません。先天的なもので、生まれつきの気質です。
ただし、HSPの特徴を持つことによって、鬱(うつ)などの症状を引き起こしやすくすることもあります。
例えばHSPは
- 自己肯定感が低い
- 完璧主義で無理しやすい
- 人に言われたことを引きずりやすい
- HSPが少数派(5人に1人)なので疎外感を感じやすい
といった特徴があります。
こういった特徴から過剰なストレスを感じ、なにかをきっかけに鬱病になってしまいやすい傾向があります。
対策は?
病気ではないとはいえ、HSPの特徴によって苦労する事は多いですよね。
日常生活や仕事など、HSPならではの苦労と対策を紹介します。
日常生活での対策
HSPならではの日常生活の苦労はいくつもあります。
私もこれまでHSPさんと話すなかでいろいろな苦労話を聞いてきました。
今回はそのなかでも最もよく耳にしてきた代表的な2点の苦労を紹介します。
音
HSPは特定の音が苦手な方が多いです。苦手というより「耐えられない」と言ったほうが正しいかもしれません。
音とうまく付き合っていくには以下の3点が重要です。
- 自分の不快な音を把握する
- 周囲に伝えておく
- 耳栓・イヤホンを常備する
HSPと音の関係についてはこちらの記事で解説しているのでよければご覧ください。
匂い
HSPにはひとより匂いに敏感な人が多いです。
他人が「いい香り」と感じてもHSPにとっては鼻を覆いたくなるほどの激臭に感じられる場合があります。
こちらも音と同様に以下が重要です。
- 自分の不快な匂いを把握する
- 周囲に伝えておく
- 身の回りのものは自分に合った匂いのものを選ぶ
匂いに対する対処法は以下も併せてご覧ください。
仕事での対策
日常生活だけではなく、HSPだと仕事でも困ることがたくさんあります。
私自身が困ったことも含めていくつか紹介します。
完璧を求めてしまう
HSPは細部に目が行きがちなのでどうしても完璧主義になってしまいます。
もともと責任感も強いので、やり続けるととことんやってしまいどうしても無理しがちです。
気付いたら深夜まで働いていて体調を崩してしまったり、精神的に追い込まれてしまったりした経験があるのではないでしょうか?
そこで有効なのが無理やり時間で区切ってしまうことです。
方法
- 作業ごとに目安の時間を決める
- 100点ではなくても、80点でも60点でも時間が来たら終わりにする
- 時間内になるべく高い点数にしようという意識に切り替える
- 満足できる出来にならなかったとしても時間のせいにする
あまり無理をしすぎてしまうと鬱病など他の病気を引き起こしかねないので、無理はしないようにしましょう。
自分の意思表示が難しい
周囲の情報を総合的に加味して判断することに長けているため、いざ「あなたの意見は?」と聞かれると困ることもあるのではないでしょうか?
よく考えてから発言したい性格のため、大勢での議論やブレスト(※)が苦手なのもHSPの特徴です。
※ブレインストーミング。ある議題に対して複数のひとが自由に意見を発散するミーティング方法
いつも周囲の情報をベースに自分の意見が決まるため、ベースとなる周囲の意見がないときにどうすべきか悩んでしまうのです。
対策としては
- 数字を使って客観的な結論であるかのように話す
- 他者や有名人の言葉を引用する
- 事前に準備しておく
などがあります。
気を使いすぎて疲れる
仕事中、同僚や上司、部下に気を使いすぎて疲れることはありませんか?
私は毎日こんな風に考えていました。
仕草や行動、声色などから相手が何を考えているか察しようとしてしまうので、小さな変化にもすぐに反応してしまいます。
冷静に考えればそんなことないのに必要以上に
- いま機嫌悪いのかな?
- 怒らせてしまった?
- 私が何かしたのかな?
このように考えてしまいます。
また、いろいろと考えすぎてしまうため、行動するまで時間がかかるというのも困ることの一つです。
と考えが堂々めぐりして結論が出しづらくなり行動するまで時間がかかってしまいます。
HSPではなくてもこういったことはあるかと思いますが、HSPは普段から他人より多くの情報を収集してしまうために考える材料が多く、HSPでない人より悩みやすいのです。
「人の目を気にするな」とはよく言うものの、生まれてからずっとこの考え方なのでなかなか治すのは難しいですよね。
せめて以下のことは頭に留めて置きましょう。
- 信頼できる人にはHSPであることを伝えておく
- こまめにダウンタイム(休憩時間)を設ける
- 居心地がよい環境を作る
上司でも同僚でも信頼できるひとには伝えておいて、いざとなったら助けてもらいましょう。
また、HSPは他の他人より周囲の刺激を受けやすいため疲れがたまるのも早いです。
5分でもいいのでこまめに休憩して1人の時間を作るようにしてください。
そのとき、自分が落ち着ける音楽を聴いたり、好きな香りをかいだり、心地よい感触のものに触れたりして、リラックスできる環境を作りましょう。
仕事を変えてしまうのも有効
それでも
- もっと自分に適した仕事があるはずだ
- もっと心地よく仕事がしたい
と思ったなら、転職や独立、フリーランス転向などで仕事を変えてしまうのも有力な手段です。
まとめ
繰り返しですがHSPは病気ではありません。
もしこの記事を読んでご自身がHSPだと思っても心配しないでください。
あなたのような方は5人に1人いますし、HSPは適切な対処法や付き合い方さえ覚えてしまえば大きな才能を発揮できます。
そのためには
- 自分はどんな環境が苦手なのか
- 何に対して心地よいと感じるのか
- どんなときに実力を発揮できるのか
などの自己分析が重要です。
改めて自分を見つめ直し、よりよい人生を生きていくために一緒にがんばりましょう。
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